柴田南雄(1916~1996)は、入野義朗らとともに現代音楽を積極的に紹介し、音楽評論家としても活躍した。彼の作品は、時代ごとに様式の変遷を見せている。彼が初めて12音技法で作曲した《朝の歌》(1952)においては、ベルクの Select... 歌劇《ルル》 《ヴァイオリン協奏曲》 演奏会用アリア《ぶどう酒》 《抒情組曲》 の音列が用いられている。1960年代に不確定性、クラスター、図形楽譜の領域に進んだあと、1970年代には、日本の民謡や伝統楽器を取り入れるようになり、 Select... 《黒田節考》 《追分節考》 《ソーラン節考》 《八木節考》 などのシアター・ピースを作った。そして、1975年には、自らの作風の展開をテーマとして、 Select... 《春はあけぼの》 《ゆく河の流れは絶えずして》 《祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり》 《昔、男ありけり》 という交響曲を作曲した。