楽典解説 > 楽語(がくご)  p.5

アーティキュレーションに関する指示

アーティキュレーションとは、音と音のつなぎ方や切り方でフレーズに表情を付けることを言います。

その指示のため、楽譜上には記号や用語が記されています。

アーティキュレーションに関わる記号

①スラー(slur)

音と音を切れ目なく「なめらかに」奏することを示します。

これを用語で示す場合は legato などを用います。


※ 弦楽器の場合は一弓(ひとゆみ)で奏することを示します。

※ 同じ音がつながれている場合は「タイ」の可能性があります。

②スタッカート(staccato / stacc.)

音を短く切って演奏することを示します。

長さの基準は 1/2 程度とされています。

③スタッカティッシモ(staccatissimo)

スタッカートより鋭く音を切って演奏することを示します。

長さの基準は 1/4 程度とされています。

④アクセント(accento)

記号の付された音が、その前後の記号の付されていない音より強く奏されることを示しています。

同様の楽語では、rf(リンフォルツァンド)、fz(フォルツァート)、sf(スフォルツァート)、sfz(スフォルツァンド)などがよく用いられます。

⑤テヌート(tenuto)

音を十分に保って奏することを示します。

結果として、やや音と音の間が切れる non legato のように聴こえることがあります。

記号が同時に複数記される場合があります。

両方の記号の意味を併せ持つと考えればよいですが、中には特定の奏法等を示す場合があります。

⑥スラー + スタッカート

mezzo staccato(約 3/4 の長さで奏する)を示します。


※ 楽器によっては「ポルタート奏法」を示す場合があります。

※ 弦楽器の場合、同一方向の弓で奏するスタッカートを示すことがあります。

⑦スラー + テヌート

弦楽器の奏法 louré (ルレ)を示すことがあります。

⑧スタッカート + テヌート

⑥と同様、mezzo staccato(約 3/4 の長さで奏する)を示します。

⑨テヌート + アクセント

音を保ちつつ、アクセントを付けます。結果として各音は強調されるとともに non legato に聴こえます。

その他の記号

⑩フェルマータ(fermata)

譜例の D音の上の記号がフェルマータで、使用される場所によって意味が変わります。

1.音符の上の場合、その音を適度に伸ばします。

2.音符と音符の間の場合、適度な長さの休止を意味します。

3.小節線の上の場合、フィーネ(fine)を示します。


※ アーティキュレーションを示すのは、1と2の場合です。

アーティキュレーションに関わる用語

標語

よく用いられる訳語

portato

ポルタート奏法(一つ一つの音を柔らかく区切って奏する)

sostenuto

音の長さを十分に保って

marcato

はっきりと(ben marcato = 十分にはっきりと)

martellato

杭で打つように

strascinando

音を引きずるように

tutta la forza

全力で