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中世前期 Page.3

オルガヌム

多声の音楽がいつ頃、生まれたのかは分かっていませんが、最古の例は9世紀後期または10世紀初期の音楽の教科書『ムジカ・エンキリアディス』(音楽提要)に記載されています。そこでは主声部を聖歌の旋律が担い、第2の声部〈オルガヌム声部〉はそれと同じ旋律を完全4度または完全5度下に記されています。これを平行オルガヌムといいます。また、オルガヌム声部が自由に動くタイプを自由オルガヌムといいます。 その後、1025年頃にグイド・ダレッツォによる『ミクロログス』(小論)にも平行オルガヌムが紹介されています。12世紀後半までは、2声の音楽が一般的でした。

▼《Rex caeli,domine,maris undisoni》

アキテーヌ地方のオルガヌム

10世紀から12世紀にかけて新しいオルガヌムが登場しました。その中でよく知られているものにフランス、アキテーヌ地方で歌われていたオルガヌムがあります。とりわけよく知られているものに12世紀リモージュにあるサン・マルシャル(聖マルシャル)修道院に保存されていた楽譜があります。
そのなかに、聖歌のひとつの音に対して、2つないし3つの音が付いているものがあり、このようなものを、メリスマ型オルガヌムといいます。また、二つの旋律が一対一の関係で動くものをディスカントゥス様式といいます。演奏は同じ時代にスペインの巡礼地サンティアゴ・デ・コンポステラで歌われていたキリエです。先程のグレゴリオ聖歌と同じ聖歌が、2声で上声部を華やかなメリスマ(メリスマとは歌詞の一音節に多数の音符を割り当てるスタイルのことをいいます)で歌われます。

▼《Cunctioitens genitor, Deus》よりキリエ

▼上演奏の譜面(※楽譜を下にスクロールすると続きが見られます。)