総合音楽講座 > 第8回 ピタゴラスと平均律とトランペット > P8

長3和音

ところで、ここで、和音について考えてみましょう。

純正調の時の長3和音の振動数比は皆さんご存知ですか?

金管楽器奏者なら、いつも倍音を利用して音列を吹いているので、多少わかる人も多いかもしれませんが、ド:ミ:ソ=4:5:6となります。

アリストクセノス学派の提案した純正調と同じです。 譜例3 の4倍音~6倍音のところを見て下さい。

では、平均律はどうかというと

1:(12√2)4乗:(12√2)7乗となって、1:1.259920599:1.498306138

わかり易いように、純正調を小数で表すと

1:1.25:1.5となり、

長3度では0.009920599も高くなり、完全5度では(ほんの少しですが)0.001693862低くなっています。

一般に言って、完全5度 の場合の純正調と平均律の誤差は余り感じられませんが、長3度ははっきりと違いがわかる誤差のように思います。

純正調の時の短3和音の振動数比

短3和音についても同様に検証してみましょう。

純正調における短3和音の計算方法は以下に示す譜例を見て下さい。

(ここで示す値は、理論値ですので、実際に当時の金管楽器で純正調の短3和音が演奏できたということではありません。)

ミ:ド:ラ=1/6:1/5:1/4となり、通分すると10:12:15となります。

これを平均律の場合と比べてみましょう。

この場合も、2の1乗根を1.059463とみなして計算します。

1:(12√2)3乗:(12√2)7乗となって、1:1.189206796:1.498306138となります。

短3度で、0.010793204低くなり、完全5度では、長3和音の時と同じ0.001693862低くなっています。

この場合も、短3度の音程の違いは、はっきりと耳で聴き取れる誤差となります。