総合音楽講座 > 第12回 マーラーの交響曲を聴いてみよう! ~9のジンクスをめぐって > P4

大地の歌

交響曲『大地の歌』は、アルト(またはバリトン)とテノールの独唱が付いた、6楽章もある交響曲です。

歌詞は、李太白らが書いた古い中国の詩を、ハンス・ベトケという人が自由にドイツ語訳したものを、さらにマーラー自身が手を加えています。

第1楽章『大地の哀愁に寄せる酒の歌』では、独唱が「生は暗く、死もまた暗い…」と歌い、第6楽章『告別』では、独唱が最後に、「永遠に、永遠に(エーヴィヒ、エーヴィヒ)…」という言葉を、ミー・レー、ミーレー という2度下りる2つの音のメロディーで、別れを惜しむかのように歌って曲は終わります。

【譜例1】

人間が死んでこの地上から去ろうとも、大地は永遠に繰り返し花を咲かせ、緑におおわれる、というのがこの交響曲の世界です。

マーラーの交響曲では『大地の歌』にとどまらず、必ずといっていいほど「死」を表現したり、暗示したりする音楽が出てきます。

それは28歳の年に完成させた最初の交響曲である第1番ニ長調「巨人」以来です。

交響曲第1番の第3楽章の出だしでは、もともと陽気な長調のメロディーを持つフランス民謡『フレール・ジャック』が、そのまま短調のメロディーにすり変えられ、重い足取りのテンポでコントラバスのソロにより不気味に歌われる葬送行進曲と化します。

【譜例2】

マーラーが交響曲『大地の歌』が完成したのは1908年夏のこと。実際には9番目の交響曲であるこの曲を書き終え、死ぬことのなかったマーラーは、「9のジンクスはついに去った!」とホッと胸をなでおろしたしたのではないでしょうか。

次の交響曲は翌年1909年の夏、着手します。そして今度こそは、交響曲第9番と題することに覚悟を決めました。実際には10番目の交響曲にあたります。

ところでマーラーが作曲に専念できるのは夏の休暇に限られていました。

通常は指揮者の職に忙殺されていたためです。そんな限られた時間で、演奏時間が1時間を優に超す、音符で真っ黒の分厚いスコアの交響曲を立て続けに書いていったのですからは、まさに人間わざとは思えない仕事ぶりです。