音楽は必ずしも「節」の始めから開始されるとは限りません。第1拍から始まるものを強起、それ以外の拍から始まるものを弱起と呼びます。また、弱起を「アウフタクト(Auftakt/独)」とも呼びます。
上例は、3/4 の3拍目から始まっています。このように弱起の場合、最初の音の前に休符は書きません。ただし、他声部に伴奏などが強起で始まっている場合はこの限りではありません。
弱起の場合、最初の小節は既定の拍数に満たない状態となり、これを不完全小節と呼びます。冒頭の不完全小節は、小節数にカウントしません。ただし、休符で埋められて完全小節となっている場合は、小節数に加えます。
また、弱起の場合は最後の小節を弱起の拍だけ短く記す場合があります。この場合も不完全小節となりますが、小節数には加えます。したがって、上例は8小節と数えます。
弱起の曲は、続くフレーズが同様に弱起となる傾向があります。
上例では、スラーで記された4つのフレーズはすべて弱起で始まっています。
最後の小節を弱起の拍だけ短く記す場合があると書きましたが、これはそのフレーズを繰り返して歌うときにメリットがあります(上例を2回続けて歌うとわかるでしょう)。そのため、有節歌曲の旋律において有用な書法と言うことができます。
しかし実際の音楽作品では、弱起の曲でも終わりの小節を弱起の分だけ短く記されない場合が多くみられます。実際の音楽作品は相応の長さを持っており、「繰り返して歌う」という必要性はなく、むしろ最後の小節が不完全小節となる不自然さがデメリットとなりますし、記譜上の「制約」になりかねません。
ここで注意していただきたいのは、「弱起の曲は終わりの小節を不完全小節にしないと間違い!」として、減点したがる人が多いということです。
弱起の曲が聴音課題などで出題される大学や職場の採用試験では、「不完全小節、知ってますよぉー」とばかりに、最後の小節を不完全小節にしましょう。
なお、ショパンの練習曲全27曲中、弱起の曲は13曲。(3番,4番,6番,7番,8番,10番,11番,13番,14番,15番,16番,17番,27番)これらはすべて完全小節で終わっています。みなさんも多くの譜例を見てみましょう。