理論的には Si を終止音とする旋法も存在するとして、以下の二つが加えられました。しかし、教会旋法ではもともと Si を避ける習慣があったこと、そして終止音とドミナントが減5度となることなどにより、実際の作品で用いられることはありませんでした。そのため、第○旋法という名称は与えられていません。
番号なし
ロクリア旋法
Si を終止音とする正格旋法
番号なし
ヒポロクリア旋法
Si を終止音とする変格旋法
ロクリア旋法 |
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F |
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D |
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F |
Fa から Si の間には全音を3つ含みますが、その結果、増4度になります。同様に Si から Fa の減5度も全音3つ分の幅となり、これを「3全音」といいます。Si を用ことにより3全音が生じやすくなりますが、中世、ルネッサンス期ではこの音程は嫌われていました。
当時は「ヘクサコード」といって Ut - Re - Mi - Fa - Sol - La の6つの音の名称をもちいて音程を得る習慣(ソルミゼーション)がありました。
Si には実際の音楽ではナチュラルとフラットの2種類がよく用いられており、これらの音を取るために、ヘクサコードを移動させる手法を用いていました。例えば Si ナチュラルの音程を取りたい場合、Ut - Re - Mi - Fa - Sol と読み、Sol を Ut に読み替えると、「Do Re Mi Fa Sol La Si Do」(イオニア旋法)の音程を得ることができます。Fa を Ut と読み替えれば Si フラットが得られます。
要するに、ヘクサコードでは Mi - Fa にしか半音が存在しないので、半音を必要とするところに Mi - Fa を割り当てて音程を測るということです。
このように音程を相対的に測る方法は、今日での 「移動ド」 の考え方に似ています。