音階や教会旋法は、半音や全音の相対的な音の並び方により決定されます。その相対的な音の関係を変えずに音の高さを変えることを「移高(いこう)」といい、特に長調、短調の音楽では「移調(いちょう)」といいます。それに対して、旋法の種類を変えることを「移旋(いせん)」といいます。
移高(移調)と移旋の例を挙げます。
もとの旋法(イオニア旋法) |
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移高 |
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Sol を開始音とするイオニア旋法に、
音の高さを変えました。
この例の場合
「ハ長調からト長調に移調した」
とも言えるでしょう。
移旋 |
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移高+移旋 |
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La を開始音とするエオリア旋法に変えました。
このように、移高と移旋が同時に行われる場合もあります。
移高(移調)は実際によく行われます。例えば歌手が自分の声域に合わせるために移調します。移調したからといって音楽の表現内容が大きく変わったとは感じないことからも、移高は音楽に決定的な影響を与えないことが分かります(1オクターブ以上など、極端に高さを変えれば表現も変わります)。
それに比べ旋法を変えると表情は大きく変わり、まったく違う音楽に聞こえることさえあります。
調性のある音楽(主音が存在する音楽)では、音の相対関係がいかに重要であるかを知ることができます。
旋法の名称は、長い伝統の中で伝えられてきたグレゴリオ聖歌を分類するために、後世の学者が作り上げた理論体系です。そのため実際の音楽ではこの理論に当てはまらないこともあります。
一般的に「音楽理論」とは、すでに存在する音楽や楽譜をたくさん分析し、共通点を見出すことで理論化されます。理論は私たちが音楽の勉強を効率よくできるようにするためにとても重要ですが、当然理論通りでない音楽も多く存在します。ここでいう音楽理論には「和声学」「対位法」「楽典」「旋法」などを挙げることができます。
例外として、まず先に理論を作ってから音楽を作った例として、20世紀に生まれた「十二音技法」の名を挙げておきましょう。