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バロック後期 Page.2

ドメニコ・スカルラッティ Domenico Scarlatti (1685年~1757年)

ナポリ派の巨匠アレッサンドロ・スカルラッティの息子としてイタリアに生まれ、ポルトガルの王室礼拝堂楽長、王女マリア・バルバラの音楽教師となり、マリア・バルバラがスペインの皇太子フェルナンドに嫁ぐと、従者の一人としてマドリードに移住。同地で没しました。他のジャンルの曲も作曲していますが、500曲を超えるチェンバロのための作品が重要です。もともとこれらは練習曲というタイトルですが、現在ではもっぱらソナタと呼ばれています。単一楽章で二部形式。鍵盤楽器のあらゆる演奏技巧が盛り込まれています。

ドメニコ・スカルラッティのソナタは基本的に2部形式で書かれ、明快な主題と時にスペインの民族音楽を感じさせる生き生きとしたリズム、鍵盤楽器の名人芸的なパッセージが随所にちりばめられています。また、曲によっては二つ目の主題があり、後半部分に主題が展開されるなど後のソナタ形式の萌芽を思わせるものもあり、その後の時代を予見させます。

▲スカルラッティの肖像画

♪ スカルラッティ:ソナタ ニ短調 K141 Allegro(冒頭のみ)

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アントニオ・ヴィヴァルディ Antonio Vivaldi(1678年~1741年)

ヴィヴァルディはヴェネツィアに生まれ、司祭としての教育を受けるとともに父親からヴァイオリンの手ほどきを受けました。その後ヴァイオリンの名手、同地のピエタ慈善院のヴァイオリンの教師、オペラの作曲家、興行師として活躍しました。オペラや宗教曲にも素晴らしい曲がありますが、音楽史の上で重要なのはヴァイオリンなどの協奏曲でしょう。これらのほとんどはピエタ慈善院の生徒たちのために作曲されたものですが、そのうちの《四季》を含む作品8や《調和の霊感》などいくつかの曲集は外国で出版され、欧州各地の音楽家に大きな影響を与えました。

▲P.L.ゲッツィ(1674年~1755年)による、ヴィヴァルディのカリカチュア

とくにバロックの独奏協奏曲の形式を確立したことは特筆に値します。急緩急の3つの楽章からなり、第1楽章はトゥッティによる主題とソロのエピソード(転調を担います)が交互に繰り返されるリトルネッロ形式で出てきます。

♪ヴァイオリン協奏曲集《四季》より「春」第1楽章(演奏:洗足学園音楽大学)

ヴァイオリン協奏曲集《四季》は1725年頃にアムステルダムで出版された全12曲からなる《和声と創意への試み》Op.8の最初の4曲です。楽譜の扉や楽譜に春や夏の自然や人々の様子を描写した作者不詳のソネット詩が書きこまれ、音楽による演劇のようです。第1楽章は春が来て小鳥たちがうれしげに、楽しい歌で春を迎える様子が描かれています。

▲カナレット(1697年~1768年)による、当時のヴェネツィアの景観画