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千人の交響曲

マーラーが生涯に何曲交響曲を作曲したかについてお話する前に、マーラーの交響曲が、どのくらいとてつもないスケールの交響曲を作ったかということについてふれましょう。

一番の極めつけの大作は交響曲第8番変ホ長調です。

上演には、大編成のオーケストラ、独唱8名、混声合唱2組、児童合唱1組を要し、演奏時間は1時間半におよぶという曲なのですからビックリな規模ですよね。

なにせこの曲、『千人の交響曲』と呼ばれているくらいですから、ハンパな大作じゃないです。

実際には800名ぐらいの演奏者で十分上演できるのですけれど、1000人を超える演奏者で初演されたため、このニックネームが付きました。

第8番は、マーラーが生きている間に初演された最後の交響曲となりました。この『千人の交響曲』についてマーラーは、こうコメントしています。

「(この交響曲では)宇宙全体が歌い奏でます。それは人間の声でなく、遊星と太陽の音楽なのです」

ちなみに、演奏者の数では『千人の交響曲』がダントツですが、演奏時間の長さでは第3番ニ短調が一番長大で、全6楽章にして1時間40分ほどの演奏時間を要します。『千人の交響曲』はマーラーが47歳の年に完成しました。

ここまで8つの交響曲を完成させたわけですが、この時点でマーラーは、おそらくこんな心境だったことでしょう。

「次はついに9番だ、しかしそれを完成させれば死が訪れる、だがオレは死にたくない、まだまだ交響曲を書き続けたいのだ…」

マーラーは9のジンクスの不安にさいなまれ、やがてこんな感じで、苦しまぎれの策を思いついたのでしょう。

「あっ、そうだ!次の交響曲には、曲名に9という番号をつけなきゃいいんだ」

マーラーは9番目の交響曲のタイトルを、交響曲第9番とはせず、交響曲『大地の歌』と題して、ナンバーをはずしました。

しかしこれだけジンクスを恐れながらも、そのくせ交響曲『大地の歌』の作品テーマは、ズバリ「死」。