ところが次の段落になると、ちょっと違った様相を呈してきます。先ほどの女声の主題が4小節奏でられ、Ⅴの和音(E♭のコード)で終わるところまでは同じなのですが、
そのあとの男性の主題が女性と同じ和音(E♭)で開始し、しかも違う調のEs dur(変ホ長調)で応えるのです。この「新しいフレーズを前のフレーズの終わりと同じ和音で開始する」ということ、実はあまりスムーズな流れを期待できません。譬えるならば、磁石のN極同士、またはS極同士をくっつけようとしても反発しますね。
ある程度付き合いが長くなるとお互い反発し自己主張する場面が出てくる、という誰もが経験することをメンデルスゾーンはなんとエレガントに表現していることでしょう。