この後、曲はコーダを迎え、全曲を閉じます。
譜例に指摘した通り、再現部で二人が男性の主題を高らかに歌った後は女性の主題については断片すら姿を見せません。見えるのは男性の主題の断片のみです。あたかも余韻を楽しむかのような扱いで、徐々にその姿が控えめになっていきます。
長々と一曲を見てきましたが、この曲に限らず、楽曲分析は形式を見極めたり、和音記号をつけてみたり、という作業だけでは無意味です。というより、面白くないでしょう。今まで皆さんと一緒に見てきたように、まず、曲の実態を冷静に観察し、それを踏まえて、「作曲者が何を表現したかったのか」というところまで掘り下げて考えることが聴き手に対して説得力のある表現につながるのです。