楽譜にはさまざまな言葉が書かれています。広い意味では書き込まれている言葉のすべてを楽語といいます。その言葉の意味が分からなければ、記されている情報を知らずに演奏することになります。そのため、作品を演奏する上で楽語を覚えておくことはたいへん重要です。
作曲家が楽譜を書くに際して、音符や休符のみで表現しきれないことが多くあります。作曲家が演奏家にイメージを伝えるため、言葉(比較的短い単語)を用いますが、その言葉のことを楽語(音楽用語)といいます。
楽語は、大きく次のように分類することができます。
1)速度(テンポ)
例:Allegro など
2)強弱(デュナーミク)
例:cresc. など
3)アーティキュレーション
例:legato など
4)曲想(エクスプレッション)
例:affettuoso など
※ 楽語によっては、速度と曲想を示すなど複数の項目を同時に表すものもあります。
楽語はふつうイタリア語を用いますが、ロマン派の時代以降、例えばシューマンやブラームスは自国のドイツ語を用い、ラヴェルは自国のフランス語を用いるといった例も多く見られるようになりました。日本ではイタリア語が主流なので、ここではイタリア語を中心に解説します。
言葉には、その国の独自の観念や文化を表現する場合があります。例えば、「しみじみと」や「わび・さびをもって」などは日本文化の特有の言葉の一つであり、その深い意味合いを他国の言葉に訳すことが簡単ではありません。また、それとは逆のケースもあるということを念頭におく必要があり、言葉のもつ意味やニュアンスを考えるには、その国の文化や習慣もあわせて考えることが必要です。