下記のように、数字によって絶対的な速さを示す方法があります。
譜例1)
譜例2)
譜例1は「1分間に4分音符が96個入る速さで」を意味し、譜例1は「1分間に 付点4分音符が60個入る速さで」を意味しています。ふつう、このように一拍の長さの音符を用いて速さを示します。
テンポを示す音符の前に M.M. と記されている場合がありますが、これは Mälzel's Metronome の略で、ヨハン・ネポムク・メルツェル(Johann Nepomuk Mälzel 1722-1838、メトロノームの開発者)のメトロノームを意味しています。
ちなみに 60 の速度は秒の進む速度と一緒ですので、テンポを導き出すために基準とするのが便利です。
例えば、120は1秒間に2回叩く、90は2秒間に3回叩くなどが考えられます。
上記のメトロノーム記号とは違い、速度を言葉で表す方法が速度標語です。速度標語は通常イタリア語です。以下によく用いられる日本語訳と言葉のもつ意味を挙げます。
概ね「遅い順」に記しましたが、遅いほうの3つの順序は曖昧です。
※ 速度標語はメトロノーム記号のように正確なテンポを示していません。
上記の基本的な速度標語に付け加えられる言葉を付加語、語尾を変化させるものが接尾語です。
意味を強めるものと弱めるものがありますが、強める場合は Moderato から遠い方向に、弱める場合は Moderato に近づく方向に速度が変化すると考えてください。
標語(イタリア語)、日本語訳と、その使用例を挙げます。
標語(イタリア語),
訳:日本語訳,
例:使用例
poco, un poco
訳:すこし
例:Un poco allegro
(ma) non troppo, (ma) non tanto
訳:(しかし)はなはだしくなく
例:Allegro ma non troppo
~ ino, ~ etto(接尾語)
訳:やや
例:Andantino, Allegretto
※ largo に -etto を付けると、larghetto(h が加えられる)になりますので注意しましょう。
メヌエットなどの舞曲のように、演奏される速さが習慣的に決まっている楽曲があります。
下記のように「Tempo di ~」と記し、「~の速さで」を意味します。
Tempo di minuetto
訳:メヌエットの速さで
Tempo di valse
訳:ワルツの速さで
Tempo di marcia
訳:行進曲の速さで
これらの表記方法は、楽想を同時に伝えることがあります。