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ルネサンス中期 Page.2

ジョスカン・デ・プレ

▲ ジョスカンの肖像と考えられている木版画

ジョスカン・デ・プレ(1450/55年頃~1521年)はルネサンスのフランドル楽派最大の作曲家といわれていますが、その生涯は謎に包まれています。近年、同じ頃に生きた幾人かの同名の作曲家がいたという説が浮上し、研究者の頭を悩ませています。
しかし現存する当時の記録によれば、当時フランス領だったピカルディー地方に生まれ、ミラノの宮廷礼拝堂の音楽家、同じくミラノ枢機卿アスカニオ・スフォルツァの音楽家、ローマの教皇礼拝堂の聖歌隊歌手、フランス国王ルイ12世の宮廷音楽家、イタリアのフェラーラの礼拝堂楽長、エノー伯領内のノートルダム大聖堂の司祭兼作曲家などを務め、1521年に亡くなったことなどが分かっています。
18のミサ曲や90曲を超えるモテットの他、フランス語で書かれた世俗のシャンソンなどがあり、出版楽譜などを通してその作品は各地にひろまり、ルネサンス美術の巨匠ミケランジェロに匹敵すると言われるなど生前から高く評価されていました。また、ルターは「ジョスカンは音符の主である。他の作曲家は音符の指図に従うが、ジョスカンの場合は、音符が彼の望み通りに表現しなければならない」と述べています。
ジョスカンの音楽の特徴は、なんといってもルネサンス芸術の理念である均衡のとれた響きの美しさや洗練された表現にあると言えるでしょう。また、歌詞と音楽の見事な合致も挙げられます。

ジョスカン・デ・プレ 4声のモテト《アヴェ・マリア》

▼上演奏の譜面(※楽譜を下にスクロールすると続きが見られます。)

レオナルド・ダ・ヴィンチ作『マリアの受胎告知』

1475年 - 1485年、ウフィツィ美術館(フィレンツェ)所蔵

古典古代から多大な影響を受けたルネサンス建築や美術は、均整と調和のとれた美しさ、静けさを特徴としますが、この絵画にもこうした特徴が見られます。

ドイツ語の多声声楽曲

ハインリヒ・イザーク(1450年頃~1517年)はジョスカンと並ぶフランドル楽派の作曲家。フランドルに生まれ、イタリア、フィレンツェのメディチ家の音楽家として活躍した後、ウィーンの神聖ローマ帝国皇帝マクシミリアン1世の宮廷作曲家を務めました。ミサ曲やモテト、シャンソン(フランス語の歌詞を持つ多声の世俗歌曲)、リート(ドイツ語の歌詞を持つ多声の世俗歌曲)を作曲しました。

イザーク《インスブルックよ、さようなら》

▼上演奏の譜面(※楽譜を下にスクロールすると続きが見られます。)

《インスブルックよ、さようなら》はイザークがフランドルからイタリアのフィレンツェに向かう途中、オーストリーのインスブルックを訪れました。当地の人々に大変親切にしてもらったのでしょう。立ち去る際にこの曲を別れの歌として作曲したと考えられています。ジョスカンのモテト《アヴェ・マリア》と違って和声的な書法で書かれています。歌詞はドイツ語。
「インスブルックよ、さようなら。私は私の道を通って見知らぬ土地へと向かいます。喜びは去り、喜びをどう取り戻したらいいのか私にはわかりません。私は不幸です…」。