総合音楽講座 > 第8回 ピタゴラスと平均律とトランペット > P2

振動数の比が2:3の音同士は美しく響きあうという事実から、彼はこれを積み上げて、音階を作ろうと考えました。

そうして作り上げられたのが、下の振動比率による音階です。

c d e f g a h c
1 9/8 81/64 4/3 3/2 27/16 243/128 2
c 1
d 9/8
e 81/64
f 4/3
g 3/2
a 27/16
h 243/128
c 2

半音階についても同様に進めてゆくと

cis dis eis fis gis ais his
2187/2048 19683/16384 177147/131072 729/512 6561/4096 59049/32768 531441/262144
des es fes ges as b ces
256/243 32/27 8192/6561 1024/729 128/81 16/9 4096/2187
cis 2187/2048
dis 19683/16384
eis 177147/131072
fis 729/512
gis 6561/4096
ais 59049/32768
his 531441/262144
des 256/243
es 32/27
fes 8192/6561
ges 1024/729
as 128/81
b 16/9
ces 4096/2187

となり、半音階を伴うような複雑な音楽では、事実上、和音としては響かない結果が生じてしまいます。

一方、ピタゴラスとは、異なった理論的音階を発展させた人たちがいました。

アリストクセノスの学派で、長3度を4:5になるように取り入れ、2つのテトラコルド(4つの音列)を2つ並べることで、以下のような音階を作りました。

c d e f g a h c
1 9/8 5/4 4/3 3/2 27/16 15/8 2
c 1
d 9/8
e 5/4
f 4/3
g 3/2
a 27/16
h 15/8
c 2

ピタゴラス調律と比較してみると、2度、4度、5度、6度は同じですが、3度と7度が異なっています。

このことから、旋法音楽の時代には長3和音、短3和音の振動数比は、一種類ではなかった事がわかります。

c:e:g = 1 5/4 3/2 = 4 : 5 : 6
f:a:c = 4/3 27/16 2 = 64 : 81 : 96
g:h:d = 3/2 15/8 18/8 = 4 : 5 : 6
d:f:a = 9/8 4/3 27/16 = 54 : 64 : 81
e:g:h = 5/4 3/2 15/8 = 10 : 12 : 15
c:e:f = 1:5 / 4:3 / 2 = 4:5:6
f:a:c = 4/3:27/16:2 = 64:81:96
g:h:d = 3/2:15/8:18/8 = 4:5:6
d:f:a = 9/8:4/3:27/16 = 54:64:81
e:g:h = 5/4:3/2:15/8 = 10:12:15

その後、16世紀になって、ベニスのサンマルコ寺院の楽長であったツァルリーノが「同じように調律された2つのテトラコルドは単調である」との理由で、6度を少し低めにするように改良されました。

それが、現在も「純正調」と言われている音階です。

c d e f g a h c
1 9/8 5/4 4/3 3/2 5/3 15/8 2
c 1
d 9/8
e 5/4
f 4/3
g 3/2
a 5/3
h 15/8
c 2

ここでも、長3和音と短3和音の振動数比を計算しておきましょう。

c:e:g = 1 5/4 3/2 = 4 : 5 : 6
f:a:c = 4/3 5/3 2 = 4 : 5 : 6
g:h:d = 3/2 15/8 18/8 = 4 : 5 : 6
d:f:a = 9/8 4/3 5/3 = 27 : 32 : 40
e:g:h = 5/4 3/2 15/8 = 10 : 12 : 15
c:e:f=1:5 / 4:3 / 2 = 4:5:6
f:a:c=4/3:5/3:2=4:5:6
g:h:d=3/2:15/8:18/8=4:5:6
d:f:a=9/8:4/3:5/3=27:32:40
e:g:h=5/4:3/2:15/8=10:12:15

となり、長3和音は、すべて4:5:6で協和することがわかります。

短3和音では、d:a=27:40となって、完全5度の(2:3の法則)が破られ、協和しないこととなります。