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3.ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven / 1770-1827)の時代1

♪データ4:交響曲第5番ハ短調 作品67♪

作曲年代:1807〜1808年頃

楽器編成:フルート2(Ⅳ楽章で+ピッコロ),オーボエ2,クラリネット2,ファゴット2(Ⅳ楽章で+コントラファゴット),ホルン3,トランペット2,(Ⅳ楽章で+トロンボーン3) ティンパニ,弦5部(第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)

演奏時間:(楽譜通りの繰り返しを遂行した演奏の場合) Ⅰ楽章=約7分 Ⅱ楽章=約10,5分 Ⅲ楽章=約8分 Ⅳ楽章=約11,5分 計=約37分

この作品は、通称「運命」と呼ばれている、あの「第5」です。Ⅰ楽章(YouTube) 【譜例6】を見てみましょう。

【譜例6】

ここでは、『(ン)タタタタ〜ン』という所謂“運命動機”(素材)が増殖するように畳み掛けてくる様子が目でも耳でも十分に理解できるでしょう。

このような楽曲の構成・構造に一貫性や意味性を持たせる作曲姿勢を“動機労作”と呼んだり、結果として得られる建築設計図にも匹敵するような概念を“楽曲の有機構造”と呼んだりもします。

ベートーヴェンはこのような作曲姿勢そのものについても正にパイオニアであるのです。

ですから、このシリーズの第2弾以降で探訪していくロマン派以降の作曲家にとって、こういった“動機労作”や“楽曲の有機構造”は、ベートーヴェンのあまりに見事な作品の存在があるが故に避けて通れない必須の条件になっていったのです。

Ⅲ楽章を聴き進めていくとやがて切れ目無くⅣ楽章に突入していきます。このつなぎの部分の、地の底から湧き上がって遂には勝利の凱歌をつかみ取るような効果は正に絶大で、鳥肌が立つようです。

次に Ⅳ楽章(YouTube) 【譜例7】を見てみましょう。

【譜例7】

ここでは、歴史上初めて交響曲にトロンボーンが導入されました。

当時においてトロンボーンは宗教音楽作品に使用される神聖が楽器とされていたので、世俗音楽である交響曲に導入されたことは画期的なことでした。

その他にもこの楽章にはピッコロやコントラファゴットといった最高音域と最低音域を拡大する楽器も補充され、表現の振幅の拡大傾向が伺えます。

演奏時間こそ「英雄」よりも短いものの、この「運命」の精神的質量感の迫力は神懸かり的に凄いと思いませんか。