作曲年代:1815〜1824年頃
楽器編成:フルート2(Ⅳ楽章で+ピッコロ),オーボエ2、クラリネット2,ファゴット2(Ⅳ楽章で+コントラファゴット),ホルン3,トランペット2,トロンボーン3,ティンパニ、打楽器(Ⅳ楽章のみ),弦5部(第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス),声楽(Ⅳ楽章のみ/独唱4名+混声合唱)
演奏時間:(楽譜通りの繰り返しを遂行した演奏の場合)Ⅰ楽章=約14分 Ⅱ楽章=約13,5分 Ⅲ楽章=約12分 Ⅳ楽章=約25,5分
計=約66分
この曲が有名な「第9」・「合唱付」です。
楽器編成は「第5」よりも更に拡大して、器楽様式である交響曲に声楽まで大量動員して、演奏時間は遂に1時間を超えてしまうという、まさに未曾有の規模の革命的な作品が誕生した訳です。
【譜例8】を見てみましょう。
【譜例8】
こちらは Ⅳ楽章(YouTube) の“歓喜の歌”の頂点の部分です。
この記念碑的な終楽章は、実はその構造そのものが、ベートーヴェンがこの作品に込めた理念を体現しているのですが、その解説は(これだけで膨大な説明を必要としますから)別の機会に譲ることにします。
但し、この作品が誕生した時代のヨーロッパは、王侯貴族が支配階級として君臨する封建社会がフランス革命によって瓦解して、一般の市民ひとりひとりが社会の主役であるという近代社会の幕開けの時代であり、ベートーヴェンはそういった時代の息吹を歓迎していたとうい事に思いを馳せながら、是非ともじっくりと全曲を聞き通してみてください。
ベートーヴェンの「英雄」から「運命」そして「第9」と探訪してみると、この時期に、今日的な“二管編成オーケストラ”(2 2 2 2 / 4 2 2(3) / 打 / 弦5部)が成立して定着しはじめた時期であり、交響曲作品の演奏時間も30分を遥かに超えることが当たり前になったことが判ります。
社会・経済の進展・発展とともに、芸術のフォーマットも拡大していったのです。
音楽と社会の関係性を知るほどに、音楽作品そのものに対する視点が多彩になり興味も深くなっていきます。