竹の縦笛の一種で、一尺八寸(約55cm)の長さのものが基本であるところからこの名がある。 中国には洞簫(とうしょう/どうしょう)という縦笛があり、古代にも尺八の名で雅楽に用いられた六孔のものが伝来したが、その後廃絶した。
現在の尺八は近世(江戸時代)に虚無僧の修行用として用いられた五孔の普化(ふけ)尺八が起源である。リコーダーとは違って、吹き口(歌口)に息の流れをコントロールするための機構がないため、音を出すためには的確な角度や唇の形が必要となる。 指孔の数からみれば五音音階しか出せないはずであるが、半開や吹奏角度の変化を利用して、あらゆる音階だけでなく、雑音的効果も含めた多様な音色を出すことができる。
江戸時代には、本曲と呼ばれる修行用の独奏だけが公式に認められたものであったが、明治以降は箏や三味線との合奏も盛んに行われるようになり、三曲合奏と呼ばれる。 基本的な一尺八寸管以外にも、様々な長さのものが使われ、一寸違うとおよそ半音ピッチが変わる。
普化古典本曲。 尺八は江戸時代、虚無僧(こむそう)と呼ばれる修行者が吹くもので、全国各地にその拠点となる寺があった。 この曲は越後(新潟県)三条の明暗寺(みょうあんじ)に伝わったもので、特殊な奏法を駆使した難曲。 標準より完全四度低い二尺四寸管で演奏。
琴古流本曲。 尺八古典本曲(伝統的な独奏曲)の中でも屈指の名曲。 本来は二重奏で、二頭の鹿が鳴き交わす様子を描くとされているが、本映像では独奏。
作曲者はラジオドラマ「笛吹童子」の作曲でも知られるが、尺八奏者としても知られていた。 この曲は月を眺めながら即興で吹いたイメージを曲にしたもの。
作曲者は諸井誠、武満徹らとともに、現代的手法による邦楽器のための作品を残している。 この曲は6楽章からなり、音型の断片を任意に奏するなどの革新的手法も用いられている。 題名は釈迦の入滅、涅槃を意味する。
演奏とお話 山口 賢治
※ 各エピソードで五線譜が用いられている場合、絶対音の表記で統一しています。