能楽や歌舞伎音楽で用いられる打楽器で、大別して小鼓と大鼓がある。
歌舞伎音楽では単に鼓と言えば小鼓を指し、大鼓のことを「おおかわ」とも呼ぶ。 どちらも二枚の革を鉄の輪に張ったもののあいだに木製の胴をはさみ込んだ構造で、両側の輪に掛けられた「調べ」というひもで締められている。 小鼓は左手で調べをつかんで右肩に乗せ、締め具合を変化させながら右手で打つため、様々な音程が出る。 一方の大鼓は革をあらかじめ乾燥させてからきつく締め上げ、左脇にかかえるようにして右手で打つ。 音程は甲高い音が一種類だけしか出ないが、音量と音色で変化を付ける。能楽ではこのほかに太鼓(締め太鼓)と笛の四人編成が基本となり、謡(うたい)を入れるとひな人形で知られる五人囃子となる。歌舞伎では小鼓を増やして舞台のひな壇に並ぶことが多く、長唄に代表される三味線音楽のリズムに合わせた「チリカラ拍子」というこまかいリズムも得意とする。
古典曲。小鼓と大鼓による演奏。
能の囃子の手法を歌舞伎にも取り入れたもので、代表的な演奏場面としては歌舞伎の「静と知盛」や能の「船弁慶」の間狂言 (あいきょうげん)に用いられている。黒雲に乗って沖の方から不気味な高波が押し寄せてくる様子を小鼓と大鼓で表現している。
古典曲。本来は能管、小鼓、大鼓の編成。今回は小鼓と大鼓のみで演奏。
本来は能の囃子の定型のひとつで、登場の場面で用いられる。歌舞伎では「勧進帳」の冒頭などに用いられている。
小鼓のソロ曲。
一陽来復とは冬から春になって太陽が生命力を取り戻し、「陽」の気が満ちることを指し、この曲はそうした生命の息吹を表現している。曲中には鼓の色々な音色やウキウキする様なリズムの手法、かけ声を掛けながらの厳かな手法等、鼓がもつ独特なリズムや手法を取り入れている。
演奏とお話 西川 啓光
※ 各エピソードで五線譜が用いられている場合、絶対音の表記で統一しています。