もうひとつ指摘すると、楽譜にはこの曲ではじめてのディミニュエンドが書かれています(4小節目)。
興奮して歌い始めた相手への思いがほんの一瞬憂い(うれい)の表情に変わるみたいに。
今度は、次の5小節後半からの部分の和声進行を抜き出してみます。
おなじみのドミナントとトニックの和音が見えます。
「君はぼくの世界———どんな世界かというと僕がそこで生きられる世界」
というわけで、また最初のような元気が戻ってわくわくとして少しずつ音がのぼっていきます。
この和声進行をそっくりそのまま4度上げてつなげたのがその次です(これを和声学では反復進行と呼んでいます)。
「君はぼくの空———その中でぼくははばたくんだ!」
世界から空へ。
もしもこの詩で映画を作ったならきっと大空へ舞い上がるシーンになるでしょう。
そして、またまた登場です。
「君はぼくのお墓!」
この歌の中で最も高いG♭の音(はばたく)からだんだんおりてきてGrab「墓」へ。
でもそのお墓は彼の悩みの一切合切をずーーーっと入れておくお墓なんですって。
先程出てきた「苦痛」とこの「お墓」につけられた和音は、ともに複雑な響きの七の和音ですね(和音の種類について勉強したい方はすぐにオンラインスクールの楽典学習ページへ!)。
こういうドキッとする言葉にお似合いな和音として選んだのかもしれません。
残念ながら、これ以上長い講座にすると一度に勉強する量としては多すぎるので、今回はここまでにしましょう。
このあとも変イ長調からホ長調への転調の問題(ロマン派の曲には沢山みられます。ショパンのスケルツォ第2番とか、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲の第1楽章から第2楽章へのつながり方とか・・・)、この曲の後奏になぜだかシュ○べ○トの有名な歌のメロディーが出てくる不思議など、興味深い話は沢山ありますが、それはまたの機会に。
楽譜を“読んで”しまうと、作曲者が何を考えていたのかがわかったり、恋愛の深さがわかったり?!?!...