メンデルスゾーンは、ロマン派前期の作曲家です。バッハを再発見、特に長く埋もれていた[マタイ受難曲]を復活上演した功績は、西洋音楽史の金字塔です。ロマン派前期を日本の歴史に例えると、徳川幕府の終盤で幕末に向かう時期にオーバーラップします。
一方この時期は、古典派の時代にイギリスで勃興した産業革命が、徐々にヨーロッパの主要国にも浸透していく時期にもピタリと重なっています。ヨーロッパ全体が工業化の時代に突入していく時代であった訳です。
ここで、メンデルスゾーンの作品のひとつ、[交響曲第3番イ短調「スコットランド」作品56]を聴いてみましょう。
作曲年代:1830〜42年
楽器編成:
フルート2,オーボエ2、クラリネット2,ファゴット2,
ホルン4,トランペット2,ティンパニ、
弦5部(第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)
演奏時間:
Ⅰ楽章=約16,5分 Ⅱ楽章=約4,5分 Ⅲ楽章=約10分 Ⅳ楽章=約10分
計=約41分 (但し全楽章を休み無く通奏する)
【譜例10】YouTubeで視聴
Ⅳ楽章の終盤の華やかで壮大な終結部の部分の楽譜を、【譜例10】として提示しましょう。トロンボーンは使用されませんが、ホルンが効果的に4本使われて、今日的な二管編成の更に近づいてきたことが判ります。四つの楽章を休み無く通して演奏されて、しかもその全ての楽章がソナタ形式で書かれているという特徴を持った交響曲です。