ブラームスによって才能に認められたドヴォルザークは、やがて全欧に知られる大作曲家となります。そして1891年に強く請われてニューヨーク・ナショナル音楽院に赴任しました。新大陸の新興国だったアメリカが開拓と産業革命を達成しながらヨーロッパ主要国に並ぶ存在になったからこそ、このような事が実現したことになります。
そして、新天地のアメリカで、ニューヨーク・フィル委嘱作品として、あの「新世界交響曲」が書かれたのです。音楽や芸術作品の誕生は、その時代の社会状況や経済状況と密接に関っていることが、この事例一つをとっても判るでしょう。
では、アメリカで誕生した名曲、[ 交響曲第9番ホ短調 作品95「新世界から」]を聴いてみましょう。
作曲年代:1892年
楽器編成:フルート2(ピッコロ持ち替え1),オーボエ2(イングリシュホルン持ち替え1),
クラリネット2,ファゴット2,
ホルン4,トランペット2,トロンボーン3,テューバ、ティンパニ、打楽器
弦5部(第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)
演奏時間:
Ⅰ楽章=約9,5分 Ⅱ楽章=約12,5分 Ⅲ楽章=約8,5分 Ⅳ楽章=約11,5分
計=約44分
【譜例14】YouTubeで視聴
遠いアメリカ(新世界)の地から故郷のボヘミアへの望郷の念をこめて書いたと思われるこの交響曲は、実に大らかで魅力的です。【譜例14】は、終楽章の短い序奏の後のソナタ形式第1主題の部分です。
チャコフスキーの交響曲第5番の楽器編成とほぼ同じであることがお解りでしょう。つまり、ロマン派中期には、“金管が増強された二管編成オーケストラ”(2 2 2 2 / 4 2 3 1 / 打 / 弦5部)が定着したことを物語っています。