ブラームスも同じく a' の分析をしてみましょう。 [譜例4] をみてください。
[譜例4]
ブラームス/交響曲第1番 ( a' )
もうお気付きですね。
ベートーヴェンでは用いられなかったⅣ(ファ・ラ・ド)が2小節目に出てきます。
少しだけ複雑になったようにも見えますが、これら3つの和音Ⅰ,Ⅳ,Ⅴは「主要三和音」と呼ばれ、最も基本的な和音であり、和音上の「三種の神器」と言えるのです。
特にベートーヴェンが用いたⅠとⅤの2つは例えば「ハ長調」とか「イ短調」とかその曲が「何調であるか」を決定する上での最重要和音なのです。
そしてブラームスがそれに加えたⅣはⅠとⅤの働きを補助する、あるいは補強すると言えば良いでしょう。
いずれにせよ、2人の作曲家は共に、最も基本的な和音のみを用いて、旋律の前半8小節を作り上げていることがわかります。