第3回講座 で、ショパンの作品の和音分析中に1ヶ所「?」のついた和音があったことを憶えていますか。
ここから少し、難しい話になりますが、作曲家の巧みな仕掛けを読み解いてみましょう。
まず [譜例5] をみてください。
[譜例5]
ハ長調で使われる基本和音(固有和音)とは、要するに「ハ長調の音階に出てくる音」だけを用いて作られた和音のことです。
それを前提にベートーヴェンの b の部分を調べてみましょう。
次に [譜例6] をみてください。
[譜例6]
ベートーヴェン/交響曲第9番 ( b )
旋律上には出てこなかった♯がついた音、ソ♯とファ♯が出てきました。これが「?」の和音を作り出しているのです。
なぜなら、これらの音は「ハ長調の音階音」では無い、つまり、それによって作られている和音もハ長調の和音では無い、すなわち「?」となるわけです。
ではこれらの和音はいったいどこからやって来るのでしょうか。