この項のタイトルは、ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」から拝借しました。
ナチス・ドイツに服従することを嫌ったトラップ大佐一家が、追手から逃れるためにアルプスの山を越えるという最後の場面に出てきます。
人生「山あり谷あり」とは言え、本当に「山越え」することになるとは大変なことです。
さて旋律も「山あり谷あり」なのです。
大きな曲の中にはもちろんのこと、一つの旋律の中にも「山」つまりクライマックスがあるものです。
クライマックスを [図1] のように表してみました。
ここまでの検証でお気付きになった方もおいでかと思いますが、ベートーヴェンの「歓喜の歌」のクライマックスは、まさに b の後半にあるのです。
そこにイ短調の和音が現れることはすでに見えてきましたが、もう一つ、ファ♯が出てくる [譜例6] の4小節目の「?」の和音、これはト長調(G dur)のV(レ・ファ♯・ラ)なのです。
つまり b の後半11・12小節目ではハ長調からイ短調→ト長調→ハ長調とめまぐるしく調をめぐり、しかも5度下行→6度上行する旋律線など、変化が極めて激しい場所なのです。
まさしく息を切らして山頂に登りつめる場面と言えます。
では、それに続く a' は?。。。そうです、登山を終え、下山する場面と例えることができるでしょう。
[図1]
ベートーヴェン/交響曲第9番 (参照 [譜例1] )