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ブラームスはスロー・スターター

さぁ、検証も終わり間近です。ブラームス最後の4小節を調べましょう。

[譜例9] を見てください。これまでの12小節とはまったく異なる姿が見えてきます。

[譜例9]

ブラームス/交響曲第1番 ( c )

まず目に止まるのは旋律の動きの激しさです。

最初の2小節は音の数が多いだけでなく4度跳躍が3回も現れ、3小節目に再び6度跳躍が用いられるなど 「折れ線グラフ」 のようです。

同じようにバスの動きも の後半を受けて動き続けています。

そしてそれらの動きの多さは和音の変化も伴うこととなり、小節内に3つ、4つと用いられ、又、ト長調のⅤ(レ・ファ♯・ラ)も出てきています。

これは何をしているのでしょうか。

ベートーヴェンの の後半を思い出して下さい。

ここでも旋律の上下の動きや、和音の変化が激しくなっていましたね。

そうなのです、ベートーヴェンと同様 [図2] のように表してみてわかるように、ブラームスではこの最後の4小節、 の部分こそクライマックスなのです。

[図2]

ブラームス/交響曲第1番 (参照 [譜例2] )

この主題はもう一度繰り返されるのですが、その時このの部分には cresc. (次第に強く)から(強く)と指示された後、更にまた cresc. と記されているのです!

ブラームスがこの交響曲を書き上げるのに20数年を費やし、すでに43歳になっていたといいます。

ベートーヴェンの第1番は29歳頃ですから、交響曲作家としてのクライマックスを築くのにもじっくり時間をかけたようです。

さて2つの 「歓喜の歌」 皆さんはどのようにお感じになりましたか。

確かに、よく似たところのある旋律ではありますが、ベートーヴェンが第9で表現した「苦悩を通じて歓喜に至る」というその精神こそ、ブラームスが 「そっくり」 でありたかった本質なのではないでしょうか。