さて、今度は左手のパートだけを最初から22小節まで聴いていきましょう。
10小節目までは先ほど見たカノンの追行句を弾いていますが、11小節目からはちょっと新しいような?でもどこかで聞き覚えのある旋律です。
下の譜例をみてください。
1~10小節の上声を g moll に移調しました。
11小節目から下声部はこの旋律を弾いているのです。
ところが、最初の2つの音が(譜例のように) sol → fa♯ ではなく、mi♭→ fa に変わっているので、この旋律が登場したことにすぐには気づかず、途中で「あれっ?これって…」と思うのです。
のちほど(page 7で)触れますが、この部分はバッハの技が光っているところで、微妙な音づかいでニュアンスを出しながら、精巧な仕組みをつくっているところです。