カノンの仕組みはわかっていただけたでしょうか。今度はもう一度最初に戻って、この曲のテーマを見てみます。
1~4小節の装飾音をとってみます。
上声部3小節目 sol→sol→fa、4小節目 fa→fa→mi♭、同じ音が2回打ち直された後、2度下行していますね。
バッハの作品によく見られる音の動き方です。(ため息を表す音型としてよくつかわれます)
この曲では、最初の2小節がテーマとして大切です。そのテーマ(主役)に対しての相手役のような役割をしている音型です。
①では sol が2回続きます。
2拍目では心地よく響いていた sol が3拍目になるときつい響きになります。下声部の la♭と1オクターブと長7度離れているからです。
この7度は協和する音程ではないのです。けれども、この sol が fa に行ったときには、ちょっとほっとする感じを覚えます。
つまり、緊張→開放の関係です。この部分を強調したいということです。
②の方は、2回目の fa の音に不協和な和音を感じ、mi♭の音で解決しています。ここでも①と同じように、緊張→開放の関係の関係があります。
堅くて緊張した響きがあるからこそ、穏やかな響きが印象的に聴こえてくる和声学(ハーモニー)のひとつの方法です。