それぞれの段落の終わり方を見てみます。
第1部
11~12小節の上声を見てください。この部分は自由唱といい、追行句や他の所には出てきません。
第1部を歌い終えるためのものです。たたみかけるようにして音が上がっていく旋律線を描きながら、g moll で終わっています。
カノンでは、追行句が “遅れて” 始まるので、厳格にカノンをしていけば、終わりもずれるわけです。
この曲の場合、追行句は最後の2小節分は追いかけをしないで、 次のフレーズを開始したり、あるいは段落の終わりに向かう自由唱になったりしています。
(9~10小節の上声の部分は追行句には現れていませんが、転回されて下声部が先行句になった19~20小節には B dur で現れています)
第2部
22小節4拍目から23小節1拍目にかけて、c moll の全終止があります。
カノンとしての追いかけは20小節目で終わり、21小節~22小節は、B dur から c moll への転調を行いながら終止へと向かう自由唱の部分です。
①を上声部で模倣しています。この①は20小節目の上声部に現れた音型、つまりカノンを行う旋律の一番最後の音型です。
模倣とは文字通り “真似すること” で、ある音型が提示されると、それを別のパートでくり返すことです。
ある人が何か言葉を発すると、別の人がそれを返すイメージでしょう。カノンも同じことなのですが、長い文章を厳格に忠実に追いかけていくイメージです。